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手仕事を知る、聴く、創る|京都の絵付
京都で染織りを学ぶ中で、また違う手仕事を知ることは、とても貴重な時間です。
今回は、京都を代表する美しい伝統工芸品のひとつである扇子の絵付けを体験。そこは熟練の職人の分業によって仕上げられる繊細な京扇子を専門に扱い、100年以上の歴史を持つ老舗の奥座敷にて、絵付けを経験しました。
まずは京扇子の歴史から紐解くと、京扇子は平安時代に日本で生まれ、1200年もの時間のなかで日本独自の文化と共に発展してきたと聴きます。扇子には、実用的な用途だけではなく相手への礼節を表す役割もあり、また扇子に描かれた四季折々の情景や縁起の良い図案には、人々の祈りや願いなどの意味も込められているとの事です。
京扇子はその絵柄にも特徴があります。京扇子には四季の草花や生き物が描かれ、京都らしい“雅”で優しい印象があります。京扇子に描かれる絵は、さらに琳派の影響を大きく受けているとも聴きました。
扇子の意味を知り、和室での美しい所作を学ぶ、日本古来の扇子の持つ意味や歴史、所作などについてなど、知らない扇子の物語はまだまだ続きます。例えば『源氏物語』などに見られるように、扇子は平安時代には扇面に和歌を書いたり花を乗せて想い人に贈ったりと、雅な交流に使われていたりと聴くと次は和歌をさらに知りたくなる。知れば知るほど、深い意味が語られていきます。
ただ単に暑い時に風を起こす道具だけでない扇子は古くから日本の文化と共に歩み、現代でも和室における礼儀作法に欠かせないものであると今回の体験にて、扇子の新しい知識を吸収しました。そして絵付けでは、いくつかの色の重ねを作り、そのにじみをさらに重ねていく。自分なりの筆心にて、その模様に自分なりの色あいをグラデーションのようにひとつ、ひとつに波を作るように重ねていく工程。とても繊細で雅な絵付けの時間を得た京扇子のモノづくり。
旅と伝統と経験は明日の自分に、小さな幸せの学びと共に大きな影響を与えてくれます。
出来上がった絵付けの扇子を手に取ると、どの高価なものより愛着がふつふつとわいてきて、もうすぐ来る夏を前に静かにあおいでみたら、なんと香りがふわっとわいてきて、これがまたとても麗しい。
ぜひ、旅先では観光以外に伝統工芸体験という新しい旅の愉しさを味わってみるのもおすすめします。
染色と織物の奥深さ:手仕事の美学を冊子に
新しい冊子が完成しました。
2022年の春から学んだ京都のものづくりを記録。
それを何かに残したいとふつふつと心に思い浮かべ、
まず考えたのが冊子タイトルの言葉です。
暮らしの織物として始まったのを基本とし、
手仕事の記録として「Living TEXTILE」にしました。
表紙にあるのは、織り上げたブラケット織物で、織り上げた最後に、布始末で作る「留め」の瞬間を撮った写真です。写真にある「それぞれの糸色」はこの手により初めて天然染色したもので、それがいくつもの工程を経て織りあがり、最後になる留めで、垂れた糸がなだらかに遊んでいるように見えています。自分自身の中でも織物ができた愉しさと喜びが合わさった気がして、とても心動く一枚です。その気持ちも含めて、この写真を表紙に決めました。
さらに、この冊子では私が染色と織物に没頭し、磨き上げてきた独自の経験と知識を共有しています。染色のプロセスでは、自然の恵みと媒染という化学反応で起きる色彩が、布地に魔法のような変化をもたらします。異なる染料を組み合わせ、時間の経過と共に変わる色合いの美しさに圧倒されました。
また、織物の世界では、糸の織り方やパターンの工夫が
単なる布地を魅力的な芸術品へと変えていきます。
手織りのプロセスに込められた時間と手間を感じながら、
独自のデザインを生み出す興奮を味わった貴重な一年です。
冊子では、これらの技術やアートに対する私なりのアプローチも披露しています。
冊子は染色や織物に興味を持つ方々へのガイドブックとなることを願い、
さらなる手仕事の魅力を冊子から届けていこうと自分ものづくりプロジェクトを
目指しています。この続きになる織物やそれに関係するものづくり体験なども書きたく、
タイトルの次に「Vol.1」と書き足しました。
初心者から経験豊富なクラフトマンまで、幅広い方々にわかりやすく、
かつ深く楽しんでいただける内容に仕上げました。美しい写真や実際の
プロジェクトの紹介も交えながら、読者に手仕事の魅力を伝えたいと考えています。
このブログ記事を通じて、冊子が持つ情熱と創造性を伝え、
染色と織物の世界に新たな扉を開けるきっかけになればと願っています。
この冊子は今後、どのような形で皆さんに読んで頂けるかを考えながら、
現在は今までの経験を活かして、自分なりに考える暮らしの織りの作品を
創っている過程です。その作品の展示会を企画し、この冊子もさらにvol.2を増やし、
新たなものづくりとして、また見て頂ける機会を作って行こうと思っております。
どうぞ、その時を楽しみにしていただけるとさらに嬉しいです。
旅心のカレンダー:写真で綴る冒険の一年へようこそ(メルボルン編)
2024年のカレンダーが完成しました。
今年は辰年です。新たなスタートに良い年と言われます。さらにお話すると龍は十二支では実際に見えないものです。この年は見えないことに重心を置くと良いとも言われています。見えないものとは、自分の心、希望、夢、愛など形にできないものです。それを大事にしてみる、ちゃんと自分を知ることも大事かなと思う年なのではないかと思います。
そんな時だからこそ、想像を促す、自分にとって楽しくなることを部屋のアイテムに揃えてみるのも良きつながりを呼んでくれるかもしれません。つながりは人だけではありません。場所ももちろんあります。場所には、そこの風土や文化も根付いているので、あなたにきっと嬉しいサインを届けてくれるかもしれません。旅はその醍醐味がやっぱりあります。
今回作った旅のカレンダーは、魔法のような旅の瞬間が毎月を飾ります。各月に異なる魅力を添え、まるでメルボルンの一員として日々を過ごしているような感覚。このカレンダーは、旅が刻んだ思い出を様々な場所に広げ、メルボルンの魔法に満ちた生活を再び味わえる傑作です。
風景の美しさや文化の輝きが写真に溢れ、一年中が冒険の連続となります。カレンダーをめくるように、心も新たな場所へと旅立つ感覚。このカレンダーで、その一部を共有できたらと願っています。周りの音に悩まされず、新たな年に心浮き立つ年でありますように。
ご購入はこちらから→カレンダー2024 住むように旅をしよう(メルボルン編)
京都で技法を学ぶ、感性を育む「織物」ものづくり
2022年の春から1年間。京都の地で初めての「織物」を学ぶ機会に出会い、とても密度の深い経験をしました。心と身体に刻み込まれたという、なんとも言葉に表せないぐらいのとても充実した1年間は人生において、とても貴重な経験でした。
ここで創作したのは「暮らしの織物」をテーマに四つの織物を織り上げていきます。
さらに、この1年間の後に、その経験した貴重な日々を何かに残したいと考えて、すぐさまに写真整理や新たに書籍を読みだし、織りとは何か、染色とは何かをカテゴリー分けし、作業を進めていきました。それがやっと、ひとつの記録として出来上がったのが2023年の夏になります。
(これは来年にまた冊子として、ご紹介したく思っています。来年をお楽しみに)
織物のものづくりが始まったのが、2022年の4月からですが、そこから数えると約1 年半。
桜が咲きだした京都の風景を始めとし、夏、秋、冬と四季の彩りや自然を愉しみながら、
月1回京都へ通うスケジュールは旅と芸術と手仕事をふんだんに観て、聴いて、触っていく。
なかなか味わえない時間を五感を使いつつ、心に深い喜びと愉しさを貯めていくような感覚でした。
この「学び」には古来からの技法を覚えると共に、自然の素材から創りだす手仕事という
自分なりの感性を育んでいける、まさにかけがえのない時間も含まれています。
そして、この一年間で覚えた技法と感性にて、できあがった織物は2023年に作品展示として、京都市美術館で表現披露ができました。
天然の色を抽出した糸を様々な縞模様をあしらい、織っていく過程は今を思い返しても深い喜びがまた浮かびあがってきます。
作品は<中央下にある>桃色の陽傘になります。幾重にも重ねた色合いは、全てが手作りです。
この素晴らしい過程を忘れずに、記録のブックレット作成へ足を進めていきます。
これからも新たな作品を作りながら、空間の中で楽しめるアイテムも創って行こうと考えています。
またそのお知らせは次回にご紹介したく、楽しみにしています。
タイトルにある「学び」は本当に面白いです。特に、それは旅をしながら体験するのをお勧めします。
地元も、もちろん良いと思います。ただ、あまり近い場所は普段見慣れてしまい、気づくという新しい視点がなかなか出てこない。
だからこそ、ちょっと離れた場所の風土や文化を知ってみるとまっさらに喜ぶ自分が見えてきます。
それを経験した後に、地元の風土や文化をゆっくりと見ていく。すると、面白いぐらいに深掘りしていけるのがわかります。
それは自分の見えなかった新たな才能を掘り起こすことにつながるかもしれません。
ぜひ、次は旅と学びに。
空間の詩:感性のインテリア「飾る・彩る・装う」
今回はインテリアの中でも「飾る、彩る、装う」をテーマについてお話をしたいと思います。その前に、「飾る、彩る、装う」とは何かを言葉を使い、自然、人、街、様々な時間、場所で表現してみました。
例えば、自然での表現を読んでみましょう。
彩り豊かな四季は、自然界を美しく飾り立てています。春には桜が満開に咲き、淡いピンク色で大地を彩り、夏は緑濃い木々や色とりどりの花々が、自然の美を際立たせます。秋には紅葉が美しく広がり、赤や黄色の葉っぱがまるで自然が豪華な装いを纏っているかのようです。
次は人の表現を読んでみましょう。
人々もまた、日常を様々な色で飾り立てます。笑顔や優しさが、心を温かな色調で満たし、人間関係を美しく装います。また、文化や芸術も独自の色を添え、社会全体を豊かに飾り立てています。
さらに街での表現を読んでみましょう。
街並みも一つのアートであり、建物や街路樹が都市を彩ります。夜になると、ライトアップされた景色がまるで宝石のように輝き、街を祭りのような雰囲気で飾り立てます。建築物の美しさや街のデザインが、都市の魅力を引き立て、人々に幸福感を与えます。
最後はこのような表現です。
人生もまた、様々な出来事や経験で彩り豊かになります。困難な瞬間や喜びに満ちた瞬間が、人生を深みのあるものに彩ります。それぞれの瞬間が、個々の人生を美しく飾り立て、一緒に織りなすことで、豊かな人生が築かれるのです。
このように、文章を読んで私達が眼にする、または体感する全てには「飾る、彩る、装う」の素晴らしい感覚が描かれています。それは様々な場所、時間、その流れ全てに自分自身の中にある感性へと変化し、美に対する学びを得ていることに繋がっているのではないかと思います。
では、タイトルにある「空間の詩」について、さらに詳しく紹介したいと思います。空間の詩と聞いて、どんな事を想像しましたか。ここでお話をする「空間の詩」とは、誰もが持っている感性を表現することを意味しています。
それは部屋という空間の中で自由にその感性を使い、暮らしの日用品を様々な形や色で落とし込み、表現すること、すなわちインテリア感性ではないかと考えています。
例えば、お皿や珈琲カップを揃えて、生活に深みを与えたり、またはいくつかの形や色のアイテムの組合せで、部屋に彩りを作ったり、さらには用途にあった部屋(リビング、キッチン、寝室)にあう装いを気持ちよく整えることなど、表現することはほんとに、たくさんあります。
小さな瓶に花を活けるように、小さな額には海で拾い集めた貝殻を飾ってみたりと。
ひとつの表現方法は感性だけではない、普段使われていない「創造性」も大きく膨らんでいくようです。
アトリエでは「自然のもの、自然にまつわる」をテーマにそれぞれの感性で表現し、創っていく過程は新たな美をまた呼び起こしているのではないかと感じることがあります。それはきっと、最初に読んだ自然の中にあった動きから発見した魅力を新たな表現として、「空間の詩」を語っているのかもしれません。すなわち、詩うように、空間を飾り、彩り、装う。
いつもの部屋の模様替えを普段とは少し違う視点で、言葉を拾うように、インテリア表現をぜひ愉しんでみてはいかがでしょうか。